日本銀行福島支店


特別調査(12月公表)

平成17年11月30日
日本銀行福島支店

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『福島国際空港の利用拡大に向けた提言』
〜みんなで使おう福島国際空港〜

 本稿では福島空港を敢えて「福島国際空港」としたが、これは当県が海外との交流人口を増やすことや、海外とのビジネス拡大を期待して用いたものである。福島空港は「空港整備法」に基づき国土交通大臣が定める第三種空港であり、国際路線を有していても法令上は「国際空港」の呼称を用いることはできない。
 

(本稿の主旨)

○ 福島空港は、平成5年に県民の強い期待を背景としてスタートしたが、近年では乗降客数、貨物取扱量とも伸び悩んだ状態が続いている。同空港は国際空港としての機能も備えた福島県の重要なインフラであり、今後とも県民の負担により運営されるものである。本稿では、将来を展望して、福島国際空港の利用拡大に向けた具体的な提言を行っている。例示した施策は、ハードルの高いものも一部含まれているが、これを契機として県民が知恵を出し合い、どのようにしたら福島国際空港を有効に活用できるのか、問題を共有するよう期待したい。

(福島空港開港までの経緯)

○ 福島空港の歴史は、昭和36年に運輸省が「一県一空港」を地方に呼びかけたことからスタートした。これによって、各県で空港開設運動が積極化し、昭和39年には青森空港や山形空港などが開港するなど、東北地方にも空港開港の動きが広がった。この結果、東北地方で空港がないのは福島県だけとなったことから、県内市町村で誘致に向けた気運が盛り上がった。

もっとも、昭和40年代に入ると世界的に航空機事故が相次いだことや、昭和48年から49年にかけてオイルショックが発生したこともあって、県内の空港開設に関するムードが幾分沈静化した時期もみられた。

○ しかしながら、昭和55年に行われた「空港問題に関する県民意向調査」では「福島県に空港が必要」との回答が6割を超えるなど、空港開設に関する県民の根強い期待が確認されたことから、国に対して改めて福島県に空港が必要である旨強く訴えた経緯がある。その後の粘り強い交渉を経て、昭和61年には政府の定める第5次空港整備5ヵ年計画で福島空港の建設が許可されることとなり、平成5年3月に福島空港が開港した。

── 昭和55年夏に行われた「空港問題に関する県民意向調査」の結果をみると、「福島県に空港が必要か」との問いに対し、「ぜひ必要、なるべく必要」と回答した人が62%を占めたほか、「福島空港開港後、県民の航空機利用が増える」と予想している人が84%、「空港が出来たら利用したい」と回答した人が71%となった。

── 福島空港は、当初2,000m滑走路で供用開始。その後、滑走路の延長工事が行われ、平成10年12月から2,500m滑走路が供用開始となり、平成11年6月には上海とソウル便を抱える国際空港となった。


(福島国際空港の現状)

○ 現在、福島国際空港は、国内線5路線(札幌、名古屋、大阪、福岡、那覇)と国際線2路線(上海、ソウル)を扱っている。乗降客数は平成11年度の76万人をピークに減少傾向にあり、平成15年度の乗降客数は56万人と、定期便が就航している全国49空港1の中でも第32位と低い水準にある。

── 福島国際空港の路線をみると、これまで需要低迷から帯広便(平成13年3月休止)、函館便(平成14年3月休止)、広島便(平成14年3月休止)が休止となったほか、平成18年3月には、福岡便の休止が決定されるなど路線数が縮小傾向にある。

── 因みに、昭和39年に開港した青森空港は、福島国際空港と同じ路線数(国内:5路線、国際:2路線)ながら、乗降客数は、福島国際空港の約2.5倍に相当する141万人(平成15年度)を確保している。

また、福島国際空港の収支については、明らかにされていないが、近年の国内路線の縮小に伴う減収や、これまでの建設費用を勘案すると、将来を見据えて早急に対策を講ずることが必要と思われる。

1 国内に所在している100空港のうち、定期便が就航している49空港を選定(その他51空港は、離島に所在する空港や、米軍の利用空港など)。

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(図表2)福島国際空港利用客数推移
出所)「空港管理状況調書」




○ 開港に至るまでの期待感と比較して、近年、県民自身の当事者意識が薄れつつあることは残念である。このまま低水準の利用にとどまった場合には、将来的な県民の負担増加も懸念されるところであり、看過できない事柄のように思われる。特に、県内在住者が近隣他県に設置された空港を利用していたり、他の代替交通手段を利用している現状については憂慮すべき事態である。今後とも利用者のニーズに配慮して肌理細かなサービスを提供する努力が必要であり、創意工夫なしには現状を打開することは不可能ではなかろうか。


○ 福島国際空港の利用を躊躇する企業経営者や県民にその理由を伺うと、大多数が空港までのアクセスが悪いことを第一理由に挙げている。

現在、空港までのアクセスは道路中心であることから、マイカー客以外はバス・タクシーに頼らざるを得ない。本年4月、福島県庁前−福島国際空港間の定期運行バスが休止となったことから、現在、定期バスは郡山駅前といわき駅前から出発するだけとなっている。また、会津若松駅前からは5名以上の乗客が集まらなければ運行されない仕組みになっている。なお、県内他地域からの定期バスが運行されていないことも、仙台空港等の他空港への利用を助長しているように見受けられる。

2 大阪線のうち、関西国際空港行きは11/1〜6まで1往復/日で運行。
3 ハバロフスク線は毎年7〜9月のみの期間運行。



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平成7年から9年までの貨物取扱量は、県が福島国際空港の利用企業に対して補助金を出していたことから、この期間のみ増加。しかし、平成10年に補助金が打ち切られると、貨物取扱量は一転して減少。その後も、路線休止の影響などから減少傾向が続いており、ピーク比7割減にまで落ち込んでいる。

なお、大手企業の物流構造をみると、福島県内で製造されるものは完成品ではなく部品が多いことから、県内に止まらず、北関東地域(栃木、茨城、埼玉)の組立工場や集配センターに移動する。その後、東京湾や、東京国際空港(羽田)、成田国際空港などに輸送されてしまうケースが多い模様。従って、既に進出している大手企業の工場は、福島国際空港を利用するインセンティブに欠ける物流構造となっている点に留意する必要がある。


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(福島国際空港の利用向上策)

○ 福島国際空港は前述のとおり苦戦している状況にあるが、県民の創意工夫と支援があれば、そのポテンシャルを最大限に引き出す戦略的なインフラへと変貌させることが可能と思われる。具体的な提案は、下記の7点である。

1. 福島国際空港に対する自動車のアクセスが良いことや、駐車料が無料であることをPRし、利用増加を促進する。

福島国際空港は、同空港と近隣都市を結ぶ高速鉄道やモノレールはないが、道路網は極めて良く整備されている。また、同空港に併設されている駐車場の利用が無料(注1)という点は他空港に存在しない大きなメリットであり、マイカー客にとっては、商用でも観光でも長期間外出する際の大きな魅力になるはずである。因みに、マイカーを福島国際空港に駐車しておけば、名古屋や大阪の国際空港を経由して、海外等の遠隔地へ出かける際のメリットは大きい。すなわち、ハブ空港としての利用価値も非常に高いように思われる。こうしたメリットを積極的にPRすることは、近隣県の空港を利用している県内外のユーザーを呼び戻すことにも貢献しよう。

(注1) 仙台空港、青森空港の駐車場利用料は、普通車一台につき800円/日、成田国際空港は、普通車一台につき1,500円/日、東京国際空港(羽田)は普通車一台につき5,600円/日となっている。

2. 福島県の雄大な自然や他県に誇れる歴史文化などについてPRを一段と強化し、交流人口の増加を図る。

   福島県には磐梯山、猪苗代湖、尾瀬など雄大な自然環境があり、他県に誇れる芸術・文化や郷土史が多数存在している。福島国際空港に併設されている高速道路を利用すれば、こうした目的地に短時間かつ円滑に到着出来ることを肌理細かくPRすることが重要である。また、観光施設の所在する市町村とバス会社が協力して、福島国際空港から臨時バスを運行する体制をハイシーズンの期間に設けるだけでも、利用者の関心は高まることになろう。

なお、福島県では、遠隔地(関西、沖縄等)からの修学旅行生の取り込みを行い、当該地域への働きかけも行っているが、呼び込むだけではなく、当県の修学旅行に於いても福島国際空港を利用して当該地域に修学旅行生を多数送り込むなど、双方向の交流にする視点も大切である。こうした取り組みを広く一般にも広げることで、交流人口を更に増加させることが出来るのではなかろうか。


3. 福島産品のブランド価値を高め、貨物輸送量の増加を図る。

福島県には「果実」、「日本酒」、「会津漆器」など高品質ながら対外的なPR不足から必ずしも超一流ブランドになり切れていないものが数多く存在している。また、こうした有力産品も、国内向けが陸送、海外向けが船便を利用する状態に甘んじており、福島国際空港を利用することが殆どない。高品質で鮮度管理の行き届いた「もも」や「吟醸酒」は福島産品のブランド力を向上させる鍵になり得るはずであり、福島国際空港を利用して、逸早く国内外の消費者に届けられる販売ルートの確立が期待されるところである。

4. 各種イベントとのタイアップ。

本年7〜9月に行われた「あいづデスティネーションキャンペーン」では、期間中、約173万人の観光客を集め、活況を呈した。しかしながら、福島国際空港とJRの間では緊密な連携がとれておらず、路線先(札幌、名古屋、大阪、福岡、那覇、上海、ソウル)の空港内にはPRポスターすら掲示されていないなど、千載一遇のチャンスを逃したように思われる。このように、県外や海外にも福島を知りたいと思う潜在的な観光客はまだまだいるはずであり、創意工夫をすれば更なる掘り起こしは可能である。

今後は、県内で多くの集客が見込まれるイベントが行われる場合には、スポンサーとも協力しつつ、福島国際空港の利用をセットにしたPRを慣例化することが必要である。また、福島県の産業振興策(うつくしま産業プラン)を計画する際にも、福島国際空港の利用促進策を織り込んだ戦略的な対応が望まれる。

5. 産官学の医療技術を利用した「癒しの里」作り。

県外者に福島県のイメージを尋ねると、新千円券の肖像画に採用された野口英世の出身地であることを指摘したり、数多くの名湯や雄大な自然があることをあげる人が多い。このように一致して聞かれるイメージは、「病いや疲れを癒す里」としての魅力に溢れている点である。

従って、県内の温泉地と医療技術を組み合わせたイメージ戦略は、他県の温泉地にない独自性を有するものになるはずである。具体的には、先端医療技術を有する施設や人間ドックと温泉宿泊をセットにした医療観光面のPRなどは高い関心を呼ぶものと思われる。

例えば、お手軽な1泊2日人間ドックコースも良いが、ガン治療など高度な医療施設を産官学プロジェクトの一策として誘致できれば、海外も含めた福島県のイメージアップに直結しよう。こうした施策に伴って、空港の愛称を「Dr.ノグチ国際空港」とすることも一案である

6. 国際的な利用ニーズの掘り起こし。

国際路線を有する空港としてのメリットを活かし、海外ニーズの掘り起こしを行う視点も重要である。例えば、郡山市の「ビッグパレットふくしま」など同空港に近接する大規模コンベンションホールを利用して国際見本市を開催することも効果があがるように思われる。イベント期間中の空港利用客だけでなく、郡山・須賀川などの宿泊客増加はもちろんのこと、将来的なビジネスチャンスの増加にも結びつくことが期待できる。また、福島県と海外の交換留学生制度を拡充し、福島国際空港を海外との相互交流の拠点として位置付け利用することも、海外からの利用者の裾野を広げる意味からも重要である。

── なお、近年、韓国の観光客が福島国際空港を利用して県内のゴルフ場や温泉地などを訪問するケースが増加している。平成17年8月、ソウル便は週3便から週5便に増便されたが、こうした対応は利用者のニーズを機敏かつ肌理細かくとらえた前向きな取り組みとして評価されるものである。

7. 福島国際空港の近隣に所在する工業団地に企業誘致を促進し、ビジネス需要を高める。

 福島国際空港に近い県中・県南地区には、「うつくしま未来博」跡地に造成された「須賀川テクニカルリサーチガーデン」のほか、県や各市町村が分譲している「郡山ウェストソフトパーク」、「新白河ビジネスパーク」など計13の工業団地が所在しているが、これらの工業団地は、実質的な 利用率が5割程度に止まっている。

企業誘致に際しては、こうした工業団地と福島国際空港が近接している点を説明すると共に、県内外に展開する高速道路とのアクセスも極めて良いことをPRすることも必要である(注2)。また、従来型の大企業工場誘致ばかりでなく、視点を変えてシンクタンクや研究開発施設などにも 誘致対象を拡大することも一策である。

さらに、県内に物流センターを設置する企業を発掘できれば、貨物輸送量の増加や社用のための乗客数の増加が直接期待できよう。企業選定にあたっては、国内企業を中心とした誘致戦略ばかりではなく、海外企業にも幅広くアプローチするなど、国際空港としてのメリットを十分活かしていく努力も重要である。

(注2) 福島県は、首都圏近郊であるにもかかわらず地価が安く、優良な新卒採用者を確保し易い土地柄である。また、このところ注目を集めている災害リスクに関しても、地震保険等級が1級と東北地区で最も安全な県(他の5県は全て2級)である。これらは国内外の企業誘致を行う際の大きなセールスポイントになり得るものと思われる。



以  上

本件に関する問い合わせ先
日本銀行福島支店総務課:TEL 024−521−6364


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