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       おじゃったもんせ 第5回

『8・6水害』の記憶とその後の鹿児島」(平成15年9月26日)

 第5回目の「おじゃったもんせ」は、平成5年8月に鹿児島を襲い、未曾有の大災害をもたらした「8・6水害」を特集しました。「8・6水害」から丁度10年を迎えた今年は、災害の記憶を風化させることなく、防災意識を高めようと県内各地でシンポジウム等が開催されたほか、新聞の特集記事が組まれたり、NHKの番組 「プロジェクトX」でも「8・6水害」を取扱った「絶体絶命650人決死の脱出劇−土石流と闘った8時間−」が放映されました。日本銀行鹿児島支店では、「8・6水害」時には、後述のように様々な対応を行いましたが、台風のみならず活発な火山活動を行っている桜島が目の前に位置する当地では、日頃から災害に対する十分な備えを欠かすことができません。今後の災害発生時の対応を考えるうえでも、今一度「8・6水害」を省みてみたいと思います。

1.大雨の影響

 平成5年7月31日から8月7日にかけて、九州南部を中心に襲った集中豪雨は未曾有のもので、各地に大きな被害をもたらしました。特に8月6日には、鹿児島県本土の北部から中部を中心に、100年に1度とも言われる程の記録的な集中豪雨に見舞われ、鹿児島市の17時から20時までの4時間の総雨量は173ミリと1平方メートルあたり灯油缶約9本半分に相当する大雨となりました。

豪雨降り始めの当店前のナポリ通り

2.市内冠水と石橋の流失

 この大雨の影響で、市内各所でがけ崩れや土石流の発生が相次ぎ、道路の寸断・冠水などの被害が広い範囲に拡がっていきました。
 そして遂に甲突川が氾濫し天文館(繁華街)から西鹿児島駅周辺にかけ、約1万2千戸が浸水するなどの大災害が発生しました。また、甲突川に架かっていた5つの大きなアーチ石橋のうち、「武之橋」と「新上橋」が流失してしまいました。 江戸時代末期に城下整備の一環として肥後(熊本県)から招かれた岩永三五郎によって架けられた5つのアーチ石橋は、150年余りの間、現役の橋として利用されていましたが、この貴重な文化遺産の一部を大水害によって失うことになったのです。流出を免れた3橋は、貴重な文化遺産として後世に残すため、平成12年、石橋記念公園に移設され、同公園には五石橋の歴史や技術等を伝える石橋記念館も建設されました。

石橋記念公園に移設された五大石橋のひとつ“西田橋”

<写真提供:石橋記念公園>

3.水害時の当店の対応

 「8・6水害」時には、当店前のナポリ通りを隔てた甲突川が氾濫し、当店周囲の道路の水位は腰の高さにまで達しましたが、幸い当店の建物は冠水を免れたため、逃げ遅れた一般市民の方々に対し 、当店の施設を臨時避難所として提供し、避難者に対する炊き出しや電話の貸与などを行いました。

 業務面では、翌営業日以降発券課の窓口に汚水にまみれた銀行券が次々と持込まれ、これを1枚ずつ剥がしてはアイロンをかけ懸命に引換え作業に取組み、発券銀行としての機能を如何なく発揮しました。災害発生の8月中の引換枚数は、年間引換枚数の8割に相当する136千枚にも上りましたが、こうした懸命の作業によって殆んどの銀行券新しい銀行券と引換えられ、多くの市民に感謝されました。

 また、預金証書や通帳を紛失した人に対し、本人確認ができれば預金の払戻しが可能となるよう鹿児島財務事務所とともに金融特別措置を発動したほか、県内の金融機関の被害状況を確認し、銀行券の支払いや資金決済等に支障をきたすことのないよう迅速な対応を図りました。

当店での損傷券引換え事務の様子

.災害のあとに

 その後、激甚災害地指定を受け、甲突川の河川敷整備や下水道整備が図られ、現在では、降雨時の冠水もほとんどみられなくなりました。「8・6水害」時、腰の高さほどまで冠水した西鹿児島駅周辺は、平成16年3月13日開業予定の九州新幹線の玄関口として着々と整備されつつあります (なお、西鹿児島駅は九州新幹線の開業にあわせ、駅名を「鹿児島中央駅」と改称する予定です)。

鹿児島中央駅周辺完成予想図(写真右側の駅ビルは平成16年秋開業予定)

<写真提供:JR九州>

 また、「8・6水害」を契機に行政面における防災対策の一環として砂防ダムの建設、雨水貯留・浸透施設の設置等、防災対策が講じられ徐々にその成果が現れてきています。さらに、気象台や隣接市町村などとのネットワークづくり等、ソフト面でも様々な対応講じられてきています最近でも、平成16年度からの本格運用を目指し県と気象台が連携し「土砂災害警戒情報」提供する研究が進められているところです

 中でも最近話題になったのが、平成15年7月に運行が開始された災害避難バスです。これは、土砂災害の発生する可能性が高い地区の住民を避難勧告と同時に集団避難させるための公営バスですが、8月の台風接近時に早速初出動し、住民の迅速な避難に大きな効果を発揮しました。

 このほか、危機意識を次の世代に伝える防災リーダーの育成や、災害発生時の対応方法等を学習する施設である県民防災研修センターの設立も予定(平成18年完成予定)されています。 

 最後になりますが、こうした大災害発生時に万が一にも当店の業務がストップし、銀行券の供給等地域経済における日本銀行の重要な機能を発揮できなくなった場合には、地域の皆さんの生活に大きな悪影響を与えてしまうことは申上げるまでもありません。そうした状況に陥らないよう、当店では定期的に防災訓練を実施しているほか、実際に台風が襲来する惧れが高い場合には、天気予報をにらみつつ、予め任命された職員十数名が職場に泊まり込み、翌日の業務に支障が生じることのないよう万全の態勢で臨んでいるところです。これからも 、地域の皆さんとともに、鋭意防災のための対応を進めていきたいと考えておりますので、御支援のほどお願い申し上げます。

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