(長崎支店ご見学の印象)

平家支店長:  本日はご多忙のところ、日本銀行長崎支店にお越しいただき、ありがとうございます。最初に、長崎支店を見学された印象を伺えればと思います。
中村知事 :  発券銀行、政府の銀行、銀行の銀行の業務の内容をお伺いしましたが、具体的なお仕事の中身をお聞きしますと、ごく近くで仕事をしておりながら、こんなに多様な業務をなさっておられるとは正直言って知りませんでした。また、長崎県の金融経済概況、短観や特別調査レポートは、いつも拝見しておりますが、少人数の若いスタッフの皆さんで取り組んでおられることを知り、驚きました。


(70周年レポートについて)

平家支店長:  日本銀行長崎支店は、本年3月で開設70周年を迎えますが、それを記念して「長崎県の経済・産業の変遷と今後の課題」というレポートを作成しました。
 レポートの内容を簡単にご説明しますと、長崎県は全国に対して20年余り先行して「人口減少社会」に突入していますが、全国との違いは戦後一貫して転出超が続く社会減にあり、特に生産年齢人口が大幅に減少しています。この間、主力産業は、水産業や鉱業などの第一次産業から、造船業を中心とした製造業や、社会資本整備の進展を背景とした建設業に移り、近年は第三次産業が拡大する中で卸・小売やサービス関連(含む医療・福祉)のウェイトが拡大してきたほか、製造業では電気関連のウェイトが高まってきています。
 ただ、特に2000年代以降は全国的な景気回復・拡大の恩恵を十分に取り込めず、近年は緩やかな持ち直し・回復局面を続けつつも、

  全国対比低成長に止まっているのが実情です。
 また、全国との比較では家計支出が伸び悩んでいることが成長率の差に繋がっています。高齢化に伴って公的サービス支出や社会保障関係費の増加など政府最終消費支出が増加しているのも特徴です。こうしたこともあり、1990年代以降は、生産性の低いサービス業や医療・介護分野等への労働投入の増加も一因となって長崎県は全国対比の労働生産性が47都道府県中で下から3番目となっており、労働力人口の減少と相俟って経済成長の足枷となっています。
 ただ、人口減少下でも経済成長を実現することは可能であり、そのためには県外・海外需要の取込みや生産性の向上等に活路を見いだしていくことが必要と考えられます。具体的には、海外からだけでなく、国内他地域からも含む「インバウンド」の面では観光の、「アウトバウンド」の面では輸出・移出の強化であると思われます。
中村知事 :  このレポートを拝見し、改めて長崎県の厳しい状況を認識させられます。特に印象に残ったのが、全国対比で生産性が低いことと、その背景として外需が取り込めていないということです。外需を取りに行く必要があるということは認識しており、長崎県としても積極的に考えるべき課題ですが、なかなか外需を取りに行ける企業が少ない状況です。
平家支店長:  外需を取りに行く場合、工業製品についてはAssemblyの工場が県内には少ないため、長崎県から直接的に輸出を増やすという意味では、なかなかすぐには取り込めないと思います。一方、農林水産品であれば、直接海外に出荷することは可能だと思います。成長著しいアジアでは、値段が多少高くても美味しいもの、安全なものを求める人が多くなっています。長崎には、美味しくて安全な「質」の良い農林水産品が多いと思います。長崎県は日本の西の端に位置していますが、それはハンディではなく、アジアに近いというメリットだと思います。
 中村知事 :  農林水産物を海外に輸出することで所得が増加するのであれば、輸出に取り組む人が増えると思います。長崎県としても、様々な取組みを行っていますが、具体的な成果になかなか結び付いていません。他県の例をみると、県内の農林水産品を集約し、それを輸出できるような仕組みが必要だと感じています。
 平家支店長:  長崎県の農林水産品の輸出を推進するためには、鮮度を保つことも重要であり、そうするとインフラの整備も必要になると思います。また、需要地におけるプロモーションに加え、需要地に定期的に出荷できるような定期航路の拡充や港湾・空港までのアクセスの改善もポイントになると考えられます。長崎県産品の品質の良さを認識してもらい、必要な量を供給できれば、ルートができます。ルートができれば、
  さらに長崎県産品の知名度が向上し、需要が増えるという好循環になる可能性もあると思います。好循環になれば、全県と長崎県の総生産の乖離幅を縮めることができるかもしれません。
中村知事 :  全県と長崎県の総生産を比較すると、ここまで一方的に乖離が生じているのは産業構造の違いもあると思います。例えば、造船業の企業の皆様は、これまで相当苦労して来られました。全国と比べ、業種の違いによる影響度合いは大きいのでしょうか。
平家支店長:  基幹産業である造船業には、今後も長崎県の経済を支えてもらいたいです。ただ、全国でみれば製造業の中でも伸びたのは自動車産業であり、長崎県はその分野が得意でないことの影響はみて取れます。長崎県には造船で培った技術がありますから、持てる技術を他の分野の製造業に転用していくようなことにも取り組むべきだと考えています。
中村知事 :  支店長がおっしゃるように外から需要をどのようにして取り込むか、どのようにして付加価値を高めていくかということが、一番大事だなと改めて思ったところです。
平家支店長:  外からの需要を取り込むという意味では、観光も重要です。長崎は「魅力の宝庫」ですから、観光を産業化して、経済の活性化につなげたいところです。
中村知事 :  長崎県には豊富な観光資源がありますが、今は「ごった煮」の状態です。これらをわかり易くする必要があります。例えば、インバウンド客をお迎えするにしても、中国からの観光客用、ベトナムからの観光客用、ヨーロッパからの観光客用といった具合いに、観光コンテンツを作り上げるときに、そういった視点で魅力を整理し直して、いろんなメニューを提供していくような努力も必要だと思っています。今は、何でもあるからどうぞ皆さんお越しくださいという状況であり、それではなかなか付加価値は高まっていかないという感じがしています。
平家支店長:  国内観光客についても、観光消費額が大きいシニア層や女性のグループをターゲットとしたサービスがあっても良いかなと思います。
中村知事 :  特別感のあるプレミアムコースを作って、満足度を高め、もう一度長崎県にお越しいただけるようにしたいとも思います。

 

(長崎県の将来)

平家支店長:  昭和から平成になり、今年5月に元号が変わります。そこで長崎県の将来について、あるべき姿、目指すべき方向性についてお伺いできませんでしょうか。
中村知事 :  長崎県はこれまでも、人を呼んで栄えてきた街だと思います。国内はもちろんのこと、海外の方々との交流を重ねて、大事な役割を果たしてきました。そうした中で、国交関係がうまくいけば発展するし、うまくいかなければ一緒になって苦しみを味わうというような経験をしてきている街です。こうした経緯を考えれば、これからも一つの方向性として考えていくべきは、交流人口を増やし、その中で長崎のしっかりした居場所を作っていくこと、つまり、長崎ならではの付加価値を創造していく努力が必要だと思います。
 最終的にはマンパワーが問題になると思います。観光にしても、労働生産性が低い産業分野ではありますが、新幹線などの様々な社会基盤の整備についても、付加価値を創造していく方向で取り組んでいこうと思っています。そのために、もっと知恵を働かせないといけませんし、力を注いでいかないといけないだろうということです。
 一つは、先程も申し上げた観光です。これまでの積み重ねもあり、資源は豊富にありますが、それをうまく整理して発信できていないのではないかということです。外から見る目で、もう一度長崎県を考え直してみる必要があるのではないかということです。例えば、クロマグロの海面養殖生産量は日本一ですが、県外への出荷が殆どで、県内では食べられないのが実情です。トラフグも海面養殖生産量が日本一ですが、県内でフグを食べられるお店も極々僅かなのが実情です。これをもう一度、観光客の目線で見たときに、長崎の魅力にはどういうものがあって、どれくらいの価値があるのかということを整理し直してみる必要があるのではないかと思っています。そうすることによって、例えば同じものでも、実はもっと大勢の人にお越しいただけるとか、観光消費額ももう少し高くするとか、といったことができるのではないかと思っています。
 もう一つはモノづくりです。これまでの歴史的な経緯もあり、モノづくりの仕事に就きたいと思っている県民が多いと感じます。ただ、西の端である長崎県でモノづくりをするのは、国内的にみて非常に移動距離が長いですし、土地や水を含め、資源に恵まれていないといった様々な問題があります。そうした時にモノづくりを一歩進め、AI・IoTといった情報関連の産業をしっかりと育てることでビジネスチャンスを拡大し、付加価値を地域に残し、県民が県内に残れるようにしなければならないと思います。
平家支店長:  ありがとうございます。観光の産業化は長崎県にとって重要ですし、これまでのモノづくりを基盤にして、新たなビジネスを取り込んでいくことも地域にとって重要だと思います。いずれにしても、付加価値を高めることができれば、長崎県の生産性を向上させることができると思います。


(日本銀行長崎支店に期待すること)

平家支店長:  最後に日本銀行長崎支店に、ご要望やご期待いただけることはございますでしょうか。
中村知事 :  私は、いつも金融経済概況や短観を拝見していますが、一番感謝を申し上げたいのは、今回の特別調査レポートのように長期的なスパンで県内経済の動向を分析していただいたことです。こうした分析は初めてみました。是非これからも積極的に課題の指摘やご提言等をいただければ大変ありがたいと思っています。
平家支店長:  ありがとうございます。私どもとしても、長崎県のために日々の業務や情報発信に取り組んで参りますので、引き続きよろしくお願いします。

 

 知事による当店見学の模様

 

正面玄関にて
窓口にて

 

総務課
業務課

 

発券課
広報エリアにて
バックパネル、裁断片オブジェ前にて記念撮影