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■事務所長からのメッセージ

■時間長者の活躍を期待



 ドイツのファンタジー作家、ミヒャエル・エンデ著の「モモ」は時間どろぼうと対決する少女モモが主人公です。

 都市化する田舎町。町の人々は、時間どろぼうに勧められるままに、時間を節約して得たお金で豊かになったつもりが、逆に時間に追われ、人間らしい生活ができなくなります。人間の時間をかすめ取って自分たちが生き残ろうとする時間どろぼうの陰謀を知ったモモが、時間をつかさどる老人、マイスター・ホラと手を携え、町の人々の時間を、時間どろぼうの手から本来の持ち主に返すまでの物語です。

 鳥取に住む人々は東京などの都会人と違って、まだまだ自分の時間を自分の手にしている時間長者がたくさんいます。豊かな自然や食に恵まれ、スローライフを楽しむことができます。
 しかし交通体系の整備、さらなる都市化の波が押し寄せるとともに、時間どろぼうが忍び込んでくる(あるいはすでに背後にいる)かもしれません。また、地域の魅力がなくなり、生活の基盤が失われ地域の担い手が不足すれば、今は当たり前のように思っているスローライフを続けられなくなる心配もあります。

 担い手を確保し、地域の魅力を高めていくためには、年初にも述べた通り、地域がもつ「宝物」の潜在的な価値をきちんと評価し、強みを客観的に認識したうえ、デザイン力を発揮して、将来の地域の担い手(候補)をひきつけるように、不断に情報発信力を高める工夫が欠かせません。こうした情報発信が、結果的に、地域の魅力を観光資源として活かしたり、長い目でみて、雇用の拡大につながる可能性もあります。

 こうした観点から時間長者に対しても、スローライフをエンジョイする「消費者」の立場だけでなく、空き時間を活用して、ゆっくり時間をかけて楽しめる街並みを自らの手で育てる、あるいは次世代が活躍できる舞台を整備する、「創造的価値生産者」の役割を期待したいところです。時間どろぼうに主導権を奪われる前に、地域の価値を高める活動に主体的に参加し、次の世代が誇りを持てるような「とっとりモデル」を構築していくことが大切ではないでしょうか。

 地域の方々との意見交換等を通じて、こうした地域の価値を守り育てることができるよう、時間長者への働きかけに今後も知恵を絞っていければ幸いです。


2013年 4月
日本銀行鳥取事務所長
大石 正人   



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