随想録4 : 日本銀行神戸支店 BOJ Kobe

震災で得たこと

  • 土屋 進(元日本銀行神戸支店副調査役)
  •  私は、震災時、業務課副調査役の任務にあった。業務課の国庫金の取扱い責任者であった。被災日から10日間風呂に入れなかった。毎晩遅くまで仕事に追われ苦労も多かった。しかし、被災対応の業務処理を通じ多くのことを学んだ。
  •  それは、自分の仕事に対する取組姿勢が大きく変わったことで、その後の自分の人生にかなりプラスになった。
  •  国庫金の事務処理は、法令、規則等に定められた範囲内で事務を正確に処理することが使命とされている。しかし、被災によって、既存の書類等が紛失、便宜的に処理するしかない状況にあり、日銀本店(業務局)の指導のもと「特例的」に処理せざるを得なかった。
  • 震災で得たこと震災当日の事務室の様子
     被災日1月17日は、公務員の給料日であった。日本銀行は、国庫金の取扱を行っている。すなわち、国の税金受入、年金など社会保障費の支払等の仕事。国庫金の取扱量が多いために日本銀行本支店だけでは対応出来ないので、市中銀行に日本銀行の代理店として取扱を委嘱している。
  •  被災日、日銀神戸支店窓口での国庫金支払いは2件であった。市内の灘代理店が支払うべき公務員給料が店舗の半崩壊により日銀神戸支店が代わって支払った。また、代理店で受け入れた税金等は、2日後に日銀と決済するのが規則だが、長期間決済を猶予した。一方で、代理店で支払う事前交付の支払資金をかなり厚めに手当てし、代理店に交付した。これらは規程がなく全て日銀神戸支店の判断で行った。こうした特例的措置は多くあった。
  •  これらのことは、非常時に対応するのは、当たり前のように思えるが、回復後の処置を含め法律、規則等をしっかり詰めて勉強しないと出来ないことであった。
  •  私は、その後、代理店における事務にも携わったが、被災の経験を生かし、日常業務の法律、規則、背景をよく理解して仕事に取り組むよう心掛けた。