初めまして。一介の公僕としては、組織の「顔」となる経験自体が得難いものになりますが、大変幸せなことに、出身地にも近く大好きな大分の地で、日本銀行を代表する立場を務めることとなりました。どうぞよろしくお願いいたします。
こうして紙面でお目にかかる「顔」が交代するタイミングで、日銀が発行する紙幣の「顔」が20年ぶりに新しくなりました。大分の皆さまの中には、県人の福沢諭吉先生から渋沢栄一さんへのバトンタッチに、一抹の寂しさを感じる方もおられるかと思います。
紙幣の「顔」として過去に最も親しまれたのは、おそらく、最多登板(7回)の聖徳太子でしょう。実は、戦後間もなく、「天皇と国に尽くした歴史上の人物」という明治以来の採用基準が軍国主義的だということで、それまでの肖像人物は使えなくなりました。そうした中、「『和をもって貴しとなす』を説いた聖徳太子はむしろ平和主義者」として、例外的な扱いを占領軍に強く主張したのが、大分市出身の一万田尚登総裁だったのです。なかなか痛快なエピソードではないでしょうか。
近代日本の礎を築いた偉人を数多く輩出してきた私たちの国、そして豊の国の歴史をことほぎつつ、世界初の偽造防止技術が使われた、新しいデザインのお札を手に取っていただければと思います。(日本銀行大分支店長)