昨年の春のことでした。東京で働く僕とその家族が、偶然の旅行先に選んだのが、大分。
空港に降り立ち、満開の桜に包まれた国東半島を一路、まずは神様にごあいさつを―と、宇佐神宮を訪れたのです。澄み渡る青空の下、本殿への長い石段を望む一角に、静謐(せいひつ)な木々が柔らかい風を招き入れていました。
足を踏み入れただけで、「特別な場所」だと感得させるものがあったのでしょう。
「支店長となって大分で暮らす機会を、いただけませんでしょうか?」
厳かな神前に手を合わせると、知らず、そのようなお願いをしている自分がいました。
ふるさと九州への思いと、新たな環境で挑戦したい気持ちが募っていたタイミング。静かに祈りを込めた後、境内を巡りながら、すがすがしい気持ちに満たされました。お願いがかなうとも思わず、不思議と軽くなった心だけをありがたく持ち帰ったのですが、それから2カ月後の辞令で、あっさりと大分への転勤が決まったのです。
「宇佐の神様、パワー強過ぎ!」
あまりの霊験に驚きつつ、八幡様の総本宮にお導きいただいたことの重さには、武者震いを禁じ得ませんでした。あれから1年がたち、また桜の季節が訪れようとしています。折しも御鎮座1300年の節目。かなえてくださった願いへのお礼と、新たな挑戦への決意を胸に、次のお参りはいつにしようかと考えています。(日本銀行大分支店長)