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公表資料・寄稿

寄稿等

去年のコート

去年の冬に着ていたコートを、また引っ張り出す季節がやって来ました。とりわけ、秋冬物の洋服に感じることなのですが、久しぶりに袖を通した瞬間に、「おう、生きてた?」みたいな、ちょっとした再会の気分になったりしませんか?去年と今年の自分が、こっそりハイタッチしているような、とでもいいましょうか。

今思うと、1年前の僕は、あんまり心の余裕が持ててませんでした。思ったより寒い冬だったというのもあるし、大分という街での生活を始めてまだ半年余り、自分という存在を認めてもらいたいという軽い焦りも、どこかにあったかもしれません。

で、今の僕はといいますと、まあ、たいして立派にはなれていませんが、いろんなことを感じたり考えたりする日々の出会いのおかげで、だんだんと地に足が着いてきています。久しぶりに羽織ったコートからも、「お前、ちょっと変わったよな」という、去年の自分の声が聞こえた気がしました。

衣替えというのは、単にクローゼットの洋服を入れ替える作業ではなくて、去年の自分と今年の自分が、「どうもどうも」ってあいさつする儀式だと思っています。同じコートを着た瞬間のしっくり感は、温かな再会とバトンタッチの手触りに違いないと。冬の始まりにそんな気分を味わいたいから、僕はこの先も、お気に入りのコートを着続けていくつもりです。(日本銀行大分支店長)