30年近い日々を同じ組織で働き、あれこれ抱えながら走ってきました。1、2年置きに異動を繰り返し、前任者からパスされた大事な仕事の端っこを握り締め、どこかに自分の爪痕を残そうと額に汗した日々。ささやかに誇れる記憶の数々は、間違いなく今の僕を支えてくれています。
でも会社の中でポジションが変わるたびに、気付かされるのです。世界は自分がいなくてもちゃんと回り続けるのだという、ごく当然のことに。
そして、だからこそ、次の世代へのバトンパスは難しい。「しばらく伴走ね」とか言いながら、渡したはずのバトンをいつまでも握り続けてしまう。会社のトップもサラリーマンも、案外同じではないでしょうか。バトンから手を放さず、自分と同じ走り方まで求めてしまうなら、次のランナーが全力疾走できる瞬間は、永遠に訪れないかもしれません。
人生は長くなりました。今の達成に区切りをつけるのは不安だけど、登った山から下りない限り、新しい山の景色を見ることはできません。そして、愛した仕事が次世代に引き継がれ、時代の変化に合わせてアップデートされていくなら、明日は今日よりもきっと良くなるはずです。
結局のところ、リレーは一人で完結するものじゃありません。だから僕も、きれいにバトンを渡したい。肩の力を抜いて、気持ち良く。手放す時のわずかな寂しさは、パスが完成した誇らしさで、すぐに満たされることでしょう。(日本銀行大分支店長)