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仙台支店について

東日本大震災関連情報

1.はじめに

日本銀行は、わが国の中央銀行として、お札(日本銀行券)を発行しています。また、「お金」を安心して取引の決済に使うことができるように、物価の安定とともに金融システムの安定に努めています。仙台支店も1941年(昭和16年)に現在の地に開設されて以来、地元の皆様のご理解とご協力に支えられて、その使命を果たすべく、努力してきました。

2011年(平成23年)は、その開設から70年に当たる年でしたが、同年3月11日、三陸沖を震源とするわが国観測史上最大の巨大地震が発生しました。地震と津波による被害は、極めて広範囲かつ甚大で、被災地の金融機関の店舗にも大きな被害をもたらしました。しかし、決済システムや金融機関は、震災後も全体として安定的に業務を継続し、金融インフラとしての機能を維持してきました。ここでは、東日本大震災において日本銀行仙台支店が果たした機能等を通して、地域経済における日本銀行の役割の一端をご紹介します。

2.震災直後(3.11)の様子と対応

地震発生後、直ちに支店長を本部長とする災害対策本部を立ち上げ、来店客や職員の安全確認と機器類や施設の被害状況を確認し、支店としての業務継続能力の把握に努めました。また、翌日以降の現金供給ニーズへの対応等と、それに基づく事務処理体制の整備を図ったほか、民間金融機関や決済システム、国庫金を取扱う代理店の業務遂行状況に関する情報収集と、必要に応じその復旧に向けての対応を開始しました。

震災発生直後の店内の様子

店内は書類等が散乱。壁や天井の一部が落下したほか窓ガラスも一部破損しました。

  • 営業場が騒然とする様子
    営業場が騒然とする様子
  • 金庫内の荷崩れ
    金庫内の荷崩れ
  • 倉庫内が散乱した様子
    倉庫内が散乱した様子
  • 窓ガラスが破損した様子
    窓ガラスが破損した様子
  • 天井の一部が損傷した様子
    天井の一部が損傷した様子
  • 壁タイルが剥落した様子
    壁タイルが剥落した様子

電源の確保

当店では、幸いなことに来店客や職員にケガ等はなく、営業に支障をきたすような情報機器や建物の大きな損壊はありませんでしたが、建物や窓ガラスの一部破損、ひび割れ、書類等の散乱等、少なからず被害を受けました。しかし、震災後直ちに自家発電装置が稼働したほか、建物・設備に大きな影響がなかったことにより、店内の決済システムや各種システムの機能を維持できました。また、テレビ等により当店管内(宮城、岩手、山形3県)の被災状況をタイムリーに知り得ることができたことも、その後の危機対応を迅速に行う上で有効でした。

自家発電装置以外の電気関係設備、給排水・機械設備等、大半の設備を稼働できたことは、普段からの訓練とメンテナンスが実を結んだ結果であり、日本銀行の使命を遂行するうえで重要な基盤を提供しました。

現金整理と勘定計理等

強い揺れにより事務室には書類等が散乱しました。また、銀行券を鑑査・処理する現金関係機器類等を一時停止しました。

こうした中で、金庫の開閉機能や内部の破損状況の有無の確認、一時的に停止した機器類の点検を行い、当日の店内の勘定計理も終了させました。

また、現金を搬送する際に使用しているエレベーターが停止したことから、若手男性職員を中心に約20名が現金を手に階段を上り下りして、人力によるピストン搬送を行いました。

決済システムの維持

東日本大震災が発生した3月11日午後2時46分は、民間金融機関が当店に持ち込んだ現金の当座預金口座への入金処理等を行う時限である3時の時点を目前に控えていた時間帯でした。激しい揺れが2分以上経ってもなかなか収まらない事態に、決済関係者はこうした取引を処理しているシステム(日銀ネットといいます)が使えずに大混乱に陥るのではないかと危惧したのではないでしょうか。

しかし、本店(東京)のメインセンターが異常なく稼働する中、当店では店内の窓ガラス破損や天井剥落が発生する中にあっても日銀ネットの端末は倒壊することなく、メインセンターとの間でオンラインでの処理を継続できました。また、当店管内の取引先金融機関に設置している日銀ネット端末にも異常がなく、当日の処理を無事に終えることができました。こうしたことが、翌日以降の被災地の現金需要の高まりに備えた取引先金融機関の現金引き出し等の事務の円滑な遂行にも繋がりました。

  • オンラインシステム管理部署のホワイトボード
    オンラインシステム管理部署のホワイトボード
  • ホワイトボードに処理状況を書き出した様子
    ホワイトボードに処理状況を書き出した様子

金融上の措置

震災発生後、直ちに各金融機関等と連絡を取り、職員や店舗、システム等の被害状況、営業継続の可否等を確認しました。同時に、地震や津波による被害が甚大であることを受け、各金融機関に対して内閣府特命担当大臣(金融)と日本銀行総裁の連名で、「金融上の措置」を要請することとなりました。

金融上の措置の内容は、(1)預金証書、通帳を紛失した場合でも、預金者であることを確認して払戻しに応じること、(2)印鑑のない場合には、拇印にて応じること、(3)定期預金等の期限前払戻しに応じること、(4)災害時における手形の不渡処分について配慮すること、(5)汚れた紙幣の引換えに応じること、(6)国債を紛失した場合の相談に応じること、などといった措置に関するものです。

地震による建物の被災や電話回線の輻輳等で、関係機関や日本銀行本店との連絡に苦労する局面もありましたが、関係機関との緊密な連絡調整は維持されており、比較的円滑に対応することができました。また、金融上の措置の要請を受けた金融機関でも、被災者の方々の便宜が図られるよう、様々な対応を講じました。

3.通貨供給

被災後1週間における窓口支払

電気・ガス・水道と並び、現金は主要な生活インフラの一つであり、「円滑な現金供給」は中央銀行の責務です。

震災発生翌日である土曜日には、金融機関からの要請により、当店窓口において早朝から現金の支払いに応じたほか、岩手県盛岡市にある金融機関に寄託している銀行券の支払いも実行しました。日曜日も継続して対応した結果、震災直後における休日2日間(土・日曜)の緊急の現金支払いは、400億円に上りました。休日を含めた震災後1週間の現金支払請求は、通常の約3倍(1週間で0.9か月分)となりました。

現金輸送

被災地における急速な現金需要の高まりを受け、万全を期すため、岩手県盛岡市への現金輸送を実施することとしました。宮城・岩手両県警には、災害対応で極めて多忙な中、警備にご協力を頂き、震災翌週には現金輸送を実施することができました。

一方、仙台市周辺の石油精製施設が津波により被災したことなどから、燃料の調達は4月上旬まで困難を極めました。日本銀行仙台支店では、この間、現金輸送以外の燃料の使用を極力控えることで対応しました。

4.被災現金の引換え

震災発生1週間を過ぎた頃から、地震や津波の被害によって汚れたり傷んだ現金(損傷現金)をきれいな現金に交換する引換事務が急増しました。

持込まれる引換依頼現金は、被災したままの状態での持込みが多く、当方で洗浄・乾燥・選別といった作業を丁寧に行う必要があり、1件ごとの処理に相当な時間を要しました。平常時には引換依頼のあった現金を日を跨ってお預かりすることは行っていませんが、震災後は、引換依頼が集中したうえ、汚損程度が激しく処理時間を要したため、やむを得ず緊急措置として引換依頼現金を一旦お預かりして対応しました。もっとも、大量の引換現金の当店への持込みが続いたため、引換依頼を受けてから引換代り金をお支払いするまでに最長1ヶ月程度の時間を要し、引換依頼者の皆様にご不便を掛けることとなりました。

加えて、被災地域が広範囲に及んだことから、当店から遠方の被災地の引換依頼に応じるため、岩手県盛岡市の岩手銀行本店内に「臨時引換窓口」を設け、4月20日から7月20日までの間、損傷現金の引換事務を行いました。

この間、こうした現金引換事務に仙台支店の人員だけでは十分対応できなかったため、本店(東京)をはじめ複数の支店から多数の応援者を得て処理を行いました。その後、徐々に金融機関や引換依頼人の方々による事前の洗浄や仕分け等の協力も得られるようになった結果、8月中旬には、遅くとも依頼を受けた翌営業日に引換代り金をお支払いできるようになりました。

震災翌日から8月末までの東北4支店(青森、秋田、福島、仙台)で引換えた現金は、件数で1,500件、金額では33億円に達しました。この金額は、阪神淡路大震災当時の引換え額の4倍近い額となっています。

なお、震災後5年間の仙台支店(臨時引換窓口を含む)での引換量は、紙幣で約40万枚、貨幣で約550万枚にのぼり、これらは被災者の方々の生活再建に充てられました。

  • 泥だらけのお札を洗う様子
    泥だらけのお札を洗う様子
  • 洗ったお札をドライヤーで乾燥させている様子
    洗ったお札をドライヤーで乾燥させている様子
  • お札を並べて鑑定している様子
    お札を並べて鑑定している様子
  • 貨幣を種類ごとに仕分けている様子
    貨幣を種類ごとに仕分けている様子
  • 盛岡市の臨時引換窓口の様子(1)
    盛岡市の臨時引換窓口の様子(1)
  • 盛岡市の臨時引換窓口の様子(2)
    盛岡市の臨時引換窓口の様子(2)

5.国庫金の取扱いへの対応

日本銀行は、「政府の銀行」として、政府預金口座を通じた年金等の支払い、国税等の受入れや国債の発行・元利払い、国の資金の計理などを、日本銀行が事務を委嘱した民間金融機関店舗とともに行っています。こうした日本銀行が事務を委嘱した金融機関の店舗を代理店と言いますが、代理店は業務範囲によっていくつかの種類があり、その中でも日本銀行の本支店とほぼ同じ業務を行う代理店を「一般代理店」といいます。

東日本大震災では、岩手県および宮城県の沿岸部に所在する6つの「一般代理店」(宮古、釜石、大船渡、気仙沼、石巻、塩釜)の店舗が津波で浸水し、営業不能となる被害に見舞われ、業務の遂行が困難となりました。日本銀行仙台支店では、業務継続の困難な「一般代理店」における業務を一時引き受けることとしました。また、代理店の営業休止の長期化が国民生活に影響を及ぼしかねないため、3月下旬以降、日本銀行仙台支店や近隣の「一般代理店」へ関係官庁の取引店を変更する対応を採りました。さらに3月15日以降の国庫金振込に関して、一部を振込から現金による支払いに変更するなどの措置を講じました。

国の資金計理の面でも、津波の影響による代理店での関係書類の散逸、交通網の寸断等により日本銀行仙台支店への書類搬送が遅延するといった事態も発生しました。これらも代理店や各官庁とその取扱いを調整したうえで、取引内容を確認できる別の書類により処理したり、書類搬送ルートを変更することなどで対処しました。

6.応援体制

以上の各種対応は、日本銀行仙台支店の職員のみならず、正に日本銀行全体が機動的に応援体制を敷く中で、本支店の職員全員が心を一つにして対応に当たってきました。

また、事務を遂行するうえでの大前提となる営業所建物や設備の被害状況把握のため、本店から技師が派遣され、震災発生直後の段階でいち早く営業所の安全性を確認することが出来ました。こうしたこともあって、支店職員はこれまでにない困難な状況の中にあっても、後顧の憂いなく、常に前を向いて奮闘することができました。

この間、関係官庁、取引先金融機関、東北被災地の企業や個人の皆様方に多大なご協力とご支援をいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

修復工事中の営業場
修復工事中の営業場

東日本大震災関連情報については、本店ホームページにも記載があります。「東日本大震災関連情報」(日本銀行本店ホームページへリンク)をご覧ください。