旧営業所と活用状況
1.旧営業所の沿革
広島支店旧営業所(中区袋町)は、昭和11年9月に竣工しました。旧営業所建物は、昭和20年8月6日、爆心地から南東わずか380メートルの近距離で被爆しながらも、堅牢な構造であったため倒壊を免れ、現在でも建築当時の姿をほぼそのままに残しています。平成6年2月には、「旧日本銀行広島支店」として被爆建物等登録台帳に登録されました。なお、昭和45年には、建物の北側に新館(金庫棟)を増築しましたが、平成9年6月に取り壊しました。
参考旧営業所の概要等
建物建築時期 | 敷地面積(公簿) | 建物面積(公簿) | 備考 | |
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旧館 | 昭和11年8月 | 1,554㎡ | 3,213㎡ | 平成12年7月広島市 指定重要文化財に指定 同条件つきで広島市に無償貸与 |
新館 | 昭和45年3月 | 2,614㎡ | 1,339㎡ | 平成9年6月建物の部分を取り壊し 平成11年9月土地売却 |
住所:広島市中区袋町5番21号
建物構造(旧館):鉄筋コンクリート造陸屋根花崗岩クラリット張地下1階付5階建
敷地購入時期:昭和2年8月
2.旧営業所の広島市への贈与・無償貸与
平成4年3月に営業所を現在の中区基町に新築・移転したことから、旧営業所の処分を行うこととなりましたが、旧営業所は貴重な被爆建物であり、広島市から保存・活用への強い要望が寄せられていました。このため、処分方法について慎重に検討を重ねた結果、被爆した旧館部分は歴史的価値が高いこともあり、広島市に売却する方向で調整することとなりました。 その後、平成11年10月に広島市から日本銀行および大蔵省・建設省に対し「広島平和記念都市建設法に基づく旧営業所の贈与」の検討要請があり、協議が進められました。そして、平成12年5月、広島市長から日本銀行総裁あてに「広島平和記念都市建設法の適用による旧日本銀行広島支店土地及び建物の無償貸与・無償譲与に関する要望」が提出され、これを受けて、日本銀行では、①旧営業所が国の重要文化財に指定された場合にはこれを広島市に贈与すること、②それまでの間、旧営業所が市の重要文化財に指定された場合には、引き続き日本銀行が旧営業所の建物・土地を保有するものの、管理費等を市が負担するとの条件のもとに、これを市に無償貸与すること、を決定しました。
広島支店旧営業所の広島市への贈与・無償貸与について(平成12年5月26日政策委員会決定)
日本銀行は、今般、広島市より贈与・無償貸与の要望が寄せられた広島支店旧営業所土地・建物について、同建物が平成6年2月に被爆建物として登録されるなど、歴史的遺産としての側面を有している等の特別な事情を踏まえ、同市のご要望に応じることを政策委員会で決定しました。 今後、広島支店旧営業所の全部または一部が文化財保護法による重要文化財に指定された場合には、日本銀行は、平和記念都市建設法第3条の規定に基づき、これを広島市に贈与する方針です。 また、それまでの間の措置として、広島支店旧営業所の全部または一部が広島市文化財保護条例による市指定重要文化財に指定された場合には、広島市よりお申し入れのあった維持管理にかかる費用を同市がすべて負担し、固定資産税等の租税公課を免除するとの条件により、これを同市に無償貸与することとします。
参考広島平和記念都市建設法抜粋
第1条 (目的)
この法律は、恒久の平和を誠実に実現しようとする理想の象徴として、広島市を平和記念都市として建設することを目的とする。
第3条 (事業の援助)
国及び地方公共団体の関係諸機関は、平和記念都市建設事業が、第1条の目的にてらし重要な意義をもつことを考え、その事業の促進と完成とにできる限りの援助を与えなければならない。
3.旧営業所の保存・活用検討状況
旧営業所は、平成12年7月25日に広島市の指定重要文化財となり、同年7月31日には、広島市との使用貸借契約(無償貸与)が締結されました。平成15年6月、広島市は、「建物全体を市民主体の芸術・文化活動発表の場として活用する」ことを決定し、保存・活用方策を取りまとめました。同年12月には、保存・活用方策の具体化に向けて、「旧日本銀行広島支店保存・活用に係る企画運営委員会」が設置され、平成17年9月には、委員会から「市民主体の芸術・文化活動発表の場として利用しやすい施設への改善」、「建物の持つ文化財的価値と被爆建物という歴史的価値を生かした活用」、「市民の主体的な管理運営の実現」などの提言を受けました。 そうした提言を踏まえ、旧営業所は市指定重要文化財としての建物公開も兼ねて市民の文化活動等に利用されてきました。なお、令和4年3月から約1年半をかけた工事により、現在では、旧営業所の建物は被爆からの復旧工事後に近い状態に復原されています。